津軽塗について
津軽塗は、その名称が示すように津軽藩で産業開発のために津軽四代藩主信政公(明暦2年〜宝永7年1656年〜1710年)が漆工品の生産を奨励したことに端を発するものであります。
製造工程は、素地に布を着せ40数回も漆を塗り重ね、日数にして50余日を要してこそ初めて、出来上がる光沢、花紋であります。高尚にして優美加えて塗の堅牢と相まって室内装飾としても、実用品としても全国の漆器業界で第1位の好評を博しております。
津軽塗製造工程
【津軽塗の下地技法】
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
1.木地磨き |
木地表面の肌、稜角な どを整える。 |
木地面の鉋削り跡、逆目跡や角縁などを研磨紙(昔は鮫皮)で研磨する。 |
2.木地固め
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一種の防水処理で、木地の収縮膨張、反狂を防止する。 |
下地漆を溶剤で稀釈し、ヘラや刷毛で全体に刷り込むように塗る。厚塗は下地の附着力を低下させるので、表面に余分な漆を残さないでむらなく擦り込む。 |
3. 刻苧彫り |
刻苧がいのため溝を彫る。 |
木地の接合部、破損個所を刻苧のみ、または小刀でV字型に彫る。(深さ1.5ミリ、幅4〜5ミリ位) |
4.刻苧1回目 (刻苧かい) |
木地接合部の補強、破損部の充填。 |
刻苧彫りした箇所に刻苧漆を刻苧ベラでこき付けるように埋め込む。刻苧漆は平坦な木地面には付けない様にする。 |
5.刻苧2回目 |
1回目刻苧の落ち込みを補う。 |
1回目刻苧が乾燥後、前回より柔らかめの刻苧漆で刻苧かいを繰り返す。 |
6.刻苧はだけ |
刻苧面を平坦にし、木地面を揃える。 |
刻苧乾燥後、刻苧はだけ鉋または荒砥などで研削する。 |
7.布つもり |
布着用の布を裁断する。 |
布着する木地面より少し大きめに布を小刀で裁断する。従来は古着の麻が用いられたが、現在は殆ど純綿の布である。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
8. 布着せ |
木地の割れ、目やせの防止等の補強と共に下地の密着をよくする。 |
下地盤の上で布に布漆(糊漆)をヘラでこき付け、直にヘラに巻き取り、木地の上で巻き戻す様にして貼り付け、その上に、布漆をヘラでこき付けて密着させる。また大物では木地に布漆をヘラ付けし、その上に布を置きヘラでこき付ける方法もある。布の接ぎ目は木地の接合部を避けること。 |
9.布払い |
布着せ後の表面整理 |
布漆乾燥後、木地の外に張り出した布をマキリ(小刀)で切り払い、布節、布の重ね目等を削り平坦にする。荒砥、鮫皮等で研削することもある。 |
10.くくり地付け |
布の接ぎ目や木地と布着せとの境目を平坦にする。 |
地漆を布の接ぎ目や木地と布との落差のあるところにヘラ付けする。 |
11.くくり地研ぎ |
くくり地の肌直し、次の下地付を容易にする。 |
くくり地乾燥後、くくり地を施した箇所を荒砥で空研ぎする。 |
12.地付け |
この下地は厚い層を得られるので目ヤセの防止に効果的である。 |
下地粉でも最も荒い地之粉と糊、水、漆を順次練り合わせて地漆を作り、これをヘラまたは刷毛で塗り付ける。 |
13.地磨き |
地付面の肌を整理し、次の工程の準備をする。 |
地漆乾燥後、荒砥で空研ぎし、その後粉塵を払い取り、次の切粉地付けを容易にし、同時に付着性を高める。 |
14.切粉地付け |
下地面の肌を細かくして行き、面、合口、などの形を整える。 |
下地粉では中間の荒さにある切粉(地之粉+砥之粉)と水、漆を練り合わせて切粉地を作り、これをヘラ、刷毛等で薄く平坦に塗り付ける。 |
15. 切粉地磨き |
切粉地面の整理 |
切粉地漆乾燥後、地磨きより細かい荒砥で空研ぎし、正確な下地面を作る。 |
16. 錆び付け |
下地面を一層細かな肌にする。 |
下地粉の中でも最も細かい砥之粉と水、漆を練り合わせ、錆漆を作り、ヘラ、刷毛等で塗り付ける。 |
17. 扱き錆 |
錆地面の補正 |
錆漆乾燥後、細かい荒砥で軽く空研ぎし、砥石の当たらなかった凹部にからい錆(漆量の多い錆)をヘラでこき付ける。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
18.錆研ぎ |
下地の仕上工程で、肌形共に最後の整備をする。 |
錆漆を充分乾燥して、先ず赤砥で研ぎ、その上を名倉砥で仕上げ研ぎする。いづれも水研ぎにする。砥石の大きさは3〜4.5センチ角、厚さ2 〜2.5センチ位が一般的で、砥石の角は稍丸味を付け、研ぎ面に傷の付かないようにする。また砥石の研面は摺り合わせ砥で常に正確な面にしておく。 |
19.中塗掛け |
上塗(無地塗立)前の下塗工程 |
模様付けをしない無地塗仕上げの部分(重箱の内側、裏面等)に中塗漆を刷毛塗する。朱の無地塗立には紅柄の中塗を、黒塗立には(油煙入)を塗るのが一般的である。 |
【唐塗の技法】
1.仕掛漆調合 |
仕掛用の粘度の高い漆を作る。 |
素黒目漆と卵白を混ぜ、高粘度で肉持のよい一種の紋漆を作る。仕掛漆の割合は十人十色で、各自が長年の経験に基づいて調合試用する。(調合割合は後述) |
2.仕掛 |
唐塗のパターンの核となる斑点模様を付ける。 |
下地の仕上がり面に仕掛漆の斑点模様を付ける。模様付けは、先ず漆盤にい仕掛漆を平坦にならし、その上を仕掛ベラで軽く叩きながら漆を仕掛ベラに均一に付着させ、直に錆研ぎ面に軽く押し付けてヘラの斑点模様を置き換える。(一種の転写)この操作を繰り返して全面に仕掛する。仕掛は均一な肉厚とむらのない模様付けがよい。仕掛漆の乾固は48時間位空風呂(湿り気のない風呂)に入れ、その後徐々に湿気を与えながら5日前後で乾固させるのが普通である。 |
3.塗掛 |
仕掛模様と対比の強い色を塗り、仕掛の形状をはっきりと縁取りする。 |
仕掛をよく乾固させた後、全面に任意の彩漆をやや薄目に刷毛塗りする。仕掛が黒の場合塗掛は黄色にすることが多く、石黄を用いた黄漆の塗掛が多いので、この工程を石黄塗、なたは単に石黄と呼ぶこともある。塗掛では塗面に凹凸があるので刷毛の運びは縦横に充分通し、均一な塗厚になるように塗布する。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
4. 彩色 |
全体の色合いに変化を与え、また研ぎ出しに際して一つの基準ともなる。 |
塗掛の上に任意の彩漆を市松状に散らす。普通小巾の刷毛で不定形な塊状の模様を描き、一般に派手な色彩を用いる。彩漆の他に梨子地粉、青貝粉等も用いられる。現在では刷毛だけでなく、スポンジ、ゴム印等を用いる場合もある。彩色を三色で施したものを三彩色、二色の場合を両彩色、一色を片彩色とも言う。 |
5.呂塗 |
彩漆を適度に押さえ色調を整える。唐塗独特の色調形成に重要な役割を課す。 |
彩漆乾燥後、全面に素黒目漆を刷毛塗りする。この顔料の入らない素黒目漆は透漆の一種で、津軽地方ではこの漆を「呂漆」または単に呂とも呼ぶ。呂を塗ることは唐塗独特の深い味合いを出すには欠かせない工程である。 |
6.妻塗 |
今迄に塗り重ねられた彩漆の層に更にいろどりを添え、全体の色調を整え、また呂塗と上げ塗の境界をはっきりさせる。 |
呂塗の上全面に任意の彩漆を極薄く均一に刷毛塗りする。妻塗は上げ塗の前に塗られるので一般に上げ色と対比の強い色が用いられる。彩漆以外に錫粉、梨子地粉などもしばしば用いられる。大正期までは上げ色が彩漆の場合は妻塗を行わないのが一般的であったが、現在では殆ど妻塗が行われている。 |
7.上げ塗 |
唐塗の最後の塗り込み工程で、その塗りの地色となる。 |
妻塗りの上全面に任意の彩漆(透漆の場合もある)を刷毛で均一に厚目に塗る。但し厚過ぎるとちぢみを生ずるので、2回に分けて塗り重ねする場合もある。特に流れやすい立体的形状ではこの方法が効果的である。 |
8 荒研ぎ |
仕掛の頭(高い部分)に塗り重ねられた彩漆の層を研ぎ落とし、仕掛の肌を研ぎ出す。 |
唐塗最初の研ぎで、乾固した塗面を2分方砥石で水研ぎする。研ぎ方は、仕掛の凸部だけを研ぐようにする。砥石は三センチ前後のものがよい。荒研後風呂に入れて仕掛漆の内部を乾固させる。 |
9.中押研ぎ |
彩紋を全面にわたって大略研ぎ出す。 |
荒研ぎして乾固させた上を更に3分方水研ぎをする。研ぎの要領は荒研ぎと同様高い部分をむらなく研ぎ、その後漆風呂に入れて更に仕掛漆等の内部を乾固させる。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
10.仕上げ押研ぎ (押研ぎ) |
彩紋を研ぎ揃え、また凸部を更に低く研削する。 |
中押研ぎ後更に2分方水研ぎする。研ぎ方は、先ず彩色の箇所をねらって研ぎ、その後全体の彩紋を揃えるように研ぎ出す。水研後また漆風呂に入れて乾固させる。研ぎ作業毎に乾固を行うのは、塗り重ねた漆を完全に乾固させるためで、もし不完全な場合は仕上後、微妙なヤセが生じ、塗面の質を著しく低下させる。 |
11.扱き塗 1回目 |
塗面の凹部に漆を充填して平滑な面に近づけて行く。 |
上げ漆と同じ漆をヘラでこき付けて凹部に漆を充填する。丸物などの曲面には刷毛を用いる。凹みの著しい場合は一度乾固した上に更に扱き塗を行う。これを重ね扱き塗と言う。 |
12.扱き研ぎ |
凸部の扱き漆を研ぎ落とし、同時に彩紋を揃える。 |
乾固した扱き塗面を2分方砥石で水研ぎする。研ぎ方は、先ず彩色を平均に研ぎ揃え、次に全体の彩紋を揃えるように研いで行く。 |
13.扱 き 塗 2回目 |
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11扱き塗と同じ要領で行う。 |
14.仕上げ研ぎ |
凹部を完全になくし、彩紋の研ぎ出しもこの工程で完了する。 |
乾固した扱き塗面を最も細かい砥石で水研ぎし、紋様をむらなく研ぎ揃え、平滑な面に仕上げる。 |
15.炭はぎ下 (炭研下) |
砥石による研ぎ傷を埋め、次の炭研を容易にする。 |
仕上げ研面に生漆または素黒目漆をヘラで薄くこき付ける。扱き塗と同様の要領であるが、この工程では特に余剰の漆を残さないことが大切である。彩漆上げの場合は共色の彩漆を用いる。綿で摺り付ける場合もある。 |
16.炭 は ぎ (炭研ぎ) |
研ぎ肌を平滑に一層細かくして、艶上げの準備をする。 |
炭はぎ下をよく乾固させ、研炭で水研ぎする。先ず駿河炭で8分方研ぎ、次に呂色炭で軽く研ぎ仕上げる。仕上げ研ぎは炭を螺旋状に動かして少しづつ研ぎ進めて行く。研ぎ炭の研磨面は常に合わせ砥で擦り合わせ正確な面を保ちながら用いる。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
17.千遍下 (胴擦下) |
研ぎ肌に漆を摺り込み微細な研ぎアシに漆を浸透させる。 |
艶漆(上質生漆)の延漆(溶剤で稀釈して粘度を低くした漆)を綿で摺り付け、少し放置し、ネルで余剰の漆を拭い、再度摺り漆を行い、ネルで大略拭い、次に柔らかにもんだ和紙で拭き上げ、漆風呂に入れ充分乾かす。摺漆はむらのないように縦横十文字に摺りつける。摺漆は湿気を与えた風呂で充分乾かす。 |
18. 千遍こぐり (胴擦) |
余剰な摺漆を取り、炭研の研アシを消す。一層緻密な肌にする。 |
砥の粉と菜種油を等分位に練り合わせた研磨材をネル、メリヤス等の布切に付けて擦り磨く。千遍こぐり後、油を残さないように砥の粉で拭き上げる。(胴擦のことである)この工程は艶付けの最初の磨き工程で、呂色仕上の正否が大きく左右されるので、丹念な仕事が要求される。特に津軽塗では研ぎ工程の特殊性によって肌の荒れが著しい場合もあるので、胴擦は千遍も(千回もこする)ので千遍掛とも言われる。津軽塗独特の工程名である。 |
19.摺り漆 |
胴擦の肌に生漆を摺り付け塗面を固める。 |
艶漆を綿で摺り付け、千遍下と同じ要領で拭き上げ、湿し風呂で乾かす。 |
20.重ね摺り |
むらのない摺漆の薄い膜を形成する。 |
摺漆の乾燥面に更に摺漆を行う。和紙による拭き取り方は炭研下の要領と同様、先ず縦横十文字に荒拭きし、次に螺旋状に拭き上げる。螺旋状に拭くのは摺漆をむらなく拭き取ると同時に、次の磨き作業で摺漆の落とし度合いを見分ける目安になる。摺漆の乾燥は手早く行い、しまりのよい塗膜を作ることが大切である。 |
21.艶付 1回目 |
細かい粒子の研磨材で塗面を磨く。 |
角石(白い磨粉)の微粉と種油を用い、ネル、メリヤス等の布切で摺漆を落としながら磨いて行く。先ずタンポで全面に種油を薄く摺り付け、打ち粉(角石微粉を布で包み、所々に打ち付ける)で磨粉を付け、ネル、メリヤスなどで擦り磨いて行く。摺漆が落ちるまで(螺旋状の摺り跡がなくなるまで)研磨し、最後に打ち粉をして手のひらで磨き、油も除去する。 |
22.摺 漆 |
20と同様。 |
この摺漆の前回(20)よりやや薄目に綿摺し、拭き取りも入念に行う。その他は(20)と同様。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
23.艶 付 2回目 |
21と同様。 |
この回の艶付けは和紙(杉原紙)やガーゼなどを用いる。その他の要領は(21)と同様。 |
24.摺 漆 |
20と同様。 |
(21)と同様。特に摺漆の拭き取りは完全に拭き切るようにむらなく拭き上げる。また摺漆が不十分な場合、光沢も十分にあがらない。 |
25.仕上げ艶 |
最後の艶上げ |
種油と和紙(杉原紙)を用いて磨き、大方の摺漆を落とし、仕上げは種油、角石、唾液などを交互に付けながら、指先で擦り、摺漆を全部磨き取るようにして仕上げ艶を付ける。艶の上がりが不十分な場合はもう一度摺漆、艶付を繰り返すこともある。 |
【ななこ塗の技法】
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
1.中塗 |
種漆の吸込みを止める。 |
錆研ぎ面に中塗漆を刷毛塗する。中塗漆の替りに生漆をヘラ扱きする場合もある。 |
2.中塗り研ぎ |
中塗の塗面を平滑にし同時に種漆の密着をよくする。 |
中塗の乾固面を砥石で水研ぎする。 |
3.種漆塗 (ななこ漆塗) |
ななこ塗の輪紋を作る漆の塗込み。 |
任意の種漆を中塗よりやや厚目に刷毛塗する。 刷毛は縦横十文字に通し、均一な厚さに塗布する。ななこ塗の成否を左右する輪紋の出来は種漆の粘度、乾燥度、塗り厚などによって決まるので、この塗込工程はななこ塗の成否にとって決定的な意味を持つ。種漆が厚い場合は輪紋が大きくなり、厚過ぎると輪がつながり、瓢形(ふくべ)になる。薄い場合は輪紋が小さく、細い輪となる。塗厚がむらに塗られた場合は輪紋も大小不揃いになる。いづれにしろ塗膜の厚さを均一にすることが最も大切である。 |
4.種蒔き |
輪紋を作る種を蒔き付ける |
種漆塗布後刷毛目の落ち着くのを待って菜種を蒔く。広い面積(卓子など)に蒔く時は一隅に種を山積し、板面をやや傾斜させながら前後に振動し種を転がし全面に手早く蒔き詰めて行く。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
5.種はぎ |
輪紋形成後の種をはぎ取る |
練りベラで十五度位の角度(塗面に対するヘラの角度)で一隅から種をはぎ取る。通常種漆を温度二十度湿度八十五%前後で三十時間の乾燥後種はぎをする。種はぎは種漆の乾燥度が適正な時を見計らって行う。早過ぎると輪紋が崩れやすく、遅いと種の殻が残りやすい。 |
6.殻取り |
種はぎの時に残った種の殻を除去する。 |
種はぎ終了と同時に錐の先で輪紋の内側に付着した種殻を取り除く。種はぎの時期が適正であれば殻の付着は少ない。殻取後乾燥は十分に行う。 |
7.種研ぎ |
輪紋の鋭利な凸部を研ぎ次の塗込、模様描きなどを容易にする。 |
種漆を充分乾固させてから砥石で水研ぎし、輪紋の頭を平らにする。研ぎの度合は無地ななこと模様入では異なり、無地は四分方、模様入りは六分方研ぎとするのが通常である。また、荒砥で空研ぎする場合もある。 |
8.上げ塗り |
上げ色(地色になる)の塗り込み。 |
任意の彩漆を均一な厚さに刷毛塗する。細かな凹凸があるので刷毛の通しを充分に行う。薄目に二回塗り重ねる場合もある。 |
9.荒研ぎ |
上げ漆の余剰分を研ぎ落し、輪紋を研ぎ出す。 |
塗面を種研より細かい粒度の砥石で水研ぎし、輪紋を研ぎ出し、一〜二分方押し程度にする。模様を描き入れてある場合は、模様の部分をねらい研ぎし、次に全面の輪紋を研ぎ揃える。 |
10.扱き塗り 一回目 |
唐塗(11)と同様。 |
唐塗(11)と同様。 |
11..扱き研ぎ |
唐塗(12)と同様。 |
乾固した扱き塗面を砥石で水研ぎし、輪紋を揃えながら平滑な面に近づけて行く。研ぎは一〜二分方押しにとどめる。 |
12..扱 き 塗 二回目 |
(10)扱き塗と同様。 |
(10)扱き塗と同様。 |
13.中研ぎ |
(11)扱き研と同様。 |
(11)扱き研と同様。 |
14..扱 き 塗 三回目 |
前扱き塗と同様。 |
前扱き塗と同様。 |
15.仕上げ研ぎ |
唐塗(14)と同様。 |
唐塗(14)と同様。 |
以下仕上げ艶までは唐塗と同じ要領で操作を行う
【錦塗の技法】
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
1.中塗り |
ななこ塗と同様。 |
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2.中塗り研ぎ |
ななこ塗と同様。 |
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3.種漆塗り |
ななこ塗と同様。但し錦塗では二色の輪紋を作る。 |
中塗研面全面に朱の彩漆を刷毛塗りし、直ちに塗面の所々をヘラで掻き取り、朱漆を掻き取った箇所に黄色の彩漆を塗り、全面に刷毛を通して二色の彩漆が混ざらない様にしながら塗厚を均等にする。また別法として二色の彩漆を別々に部分塗して、全体に刷毛を通し塗り上げる場合もある。 |
4.種 蒔 |
ななこ塗と同様。 |
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5.種 は ぎ |
ななこ塗と同様。 |
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6.殻 取 |
ななこ塗と同様。 |
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7.種 研 |
ななこ塗と同様。 |
砥石で全面を水研ぎする。研ぎは六分押しにとどめる。 |
8.下絵描き |
下絵押の準備。 |
和紙(通常薄美濃)に模様を水でといた石黄で筆描きして乾かす。典型的な錦塗の模様は紗綾形と唐草模様である。 |
9.下絵押し (置目取り) |
漆の模様描をする為の下絵を線描で器物に付ける。 |
石黄で線描した面を器物面(輪紋の上)にあて、下絵が動かない様にして紙の上から刷毛でこすりつけ模様を器物に転写する。 |
10.模様描き |
漆で模様を描く。 |
黒漆で先ず唐草模様を散らし描きし、残り全面に紗綾形を筆描きする。紗綾形の線描筆はねずみのひげで作られた腰の強い筆を用いる。 |
11.隈取り (彩色) |
模様に陰影を付ける。 |
唐草模様の周囲を縁の彩漆で隈取りする。普通巾のせまい刷毛(彩色刷毛等)で雲状の模様をベタ描きする。 |
12.粉蒔 |
地色を華やかな雰囲気にする |
朱または紅柄の彩漆を全面に塗り、直ちに色錫粉(錫粉と朱または紅柄の粉を混ぜたもの)を筋違刷毛で全面に手早く蒔く。粉蒔きは塗込漆が表面に出なくなるまで充分蒔き付ける。色錫粉の配合は、錫粉10に対し、朱3〜5、または紅柄2の割合が一般的である。 |
13.粉止め |
粉を彩漆で固め定着させる |
朱の彩漆を全面に刷毛で薄塗りする。(石黄を塗布する場合もある。) |
以下荒研から仕上艶まではななこ塗と同様な作業内容による。但し扱き塗には粉止と同じ彩漆を用いる。
【紋紗塗の技法】
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
1.中 塗 |
錦塗と同様。 |
錦塗と同様。 |
2.中 塗 研 |
錦塗と同様。 |
錦塗と同様。 |
3.下 絵 描 |
錦塗と同様。 |
錦塗と同様。 |
4.下 絵 押 |
錦塗と同様。 |
錦塗と同様。 |
5.模 様 描 |
紋紗塗の黒い模様作り。 |
黒紋漆(唐塗の仕掛漆)又は黒呂色漆に溶剤を入れ粘度を調節し、肉厚に模様を筆描きする。一度に厚く描いてちぢむおそれのある場合は二〜三回重ね描きする場合もある。 |
6.紗蒔 一回目 (炭蒔) |
紋紗塗独特の艶のない粗面の肌を作る。 |
上質素黒目(黒種漆)を全面に刷毛塗し、直ちに籾殻炭粉または研炭粉を篩で蒔き詰めて行く。紗蒔は荒い粉と細かい粉を用いて詰め蒔きするのが原則であるが、その手順に次の二種の方法がある。 一、先ず荒い炭粉を蒔き、直ちに余剰の粉を振り落とし、その直後に細かい粉を同じ要領で全面に蒔き付ける。 二、荒い炭粉を蒔き、余剰の粉を振り落として、一旦風呂に入れて乾固させ、軽く空研ぎし、再び漆を塗り直ちに細かい粉を蒔き付ける。但し、研炭粉の場合は一回蒔で紗蒔を完了するのが普通である。 |
7.荒 研 |
模様を大略研ぎ出し、同時に次の塗込みのために肌を整える。 |
余剰の炭粉を払い落とし、砥石で先ず模様を研ぎ出しその後全面を研ぎながら紗地を揃えて行く。研ぎ上がったら水洗いして次の塗込みの準備をする。 |
8.紗 蒔 二回目 |
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希釈した黒種漆を薄塗し、直ちに細かい紗を篩で蒔き付け、余剰の粉を振い落として乾燥する。 |
9.仕上げ研ぎ |
模様の研ぎ出し、紗地の揃え研ぎを完了する。 |
水洗いして余分な粉を流してから、最も細かい粒度の砥石で水研ぎする。紗地の仕上げ押具合は各人によって異なる。紋紗塗では最後の研磨面が他の塗のように平滑ではなく、紗地は炭粉で粗面に仕上げ、模様を艶のある平滑な面に仕上げることが特色である。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
10.炭 は ぎ (炭研) |
唐塗と同様。 |
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11.千 遍 下 |
唐塗と同様。 |
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12.千遍こぐり (胴擦) |
唐塗と同様但し凸部のみを擦り磨く。 |
紋紗塗の肌は微細な粗面であるため、凸部だけを磨くように、当木を包み込んだネルで研磨し、凹部に研磨剤を埋めないようにする。 |
13.摺 漆 一回目 |
唐塗と同様。 |
胴擦と同様、凸部だけに摺漆を施す。当木を布または紙で包み、その平坦な面に摺漆を付けて摺漆を施す。和紙で拭き上げ乾燥する。 |
14.重 ね 摺 二回目 |
唐塗と同様。 |
(13)摺漆と同じ要領で行う。 |
15.艶 付 一回目 |
唐塗と同様。 |
胴擦と同様当木を用い、研磨剤は他の艶上げと同様角石と種油を用いる。 |
16.摺 漆 三回目 |
14の繰り返し。 |
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17.艶 付 二回目 |
15の繰り返し。 |
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18.摺 漆 四回目 |
14の繰り返し。 |
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19.仕上艶付 |
最後の磨き仕上げ。 |
当木を和紙で包み、種油を少量付けて磨き、その後微量の角石を手の平につけて磨き上げる。籾殻炭粉は紗地(凸部のところ)に艶があり、研炭粉は一般に艶がない。 |
【上塗(無地塗)の技法】 ・・・重箱について・・・
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
1.中 塗 研 |
上塗に適した平滑な肌にする。 |
中塗面を先ず砥石で水研ぎし、節、刷毛目などを大略研ぎ落とし、次に駿河炭で水研ぎをして平滑な肌に仕上げる。 |
2桟付け |
重箱の板蓋、身裏側の棧の接着。 |
中塗研ぎの完了した棧(接着面白木)の接着面に麦錆漆をヘラ付けし、所定の箇所に押しつけ、はみだした余剰の漆をヘラでかき取り、更に溶剤(ガソリン)で拭き取り乾燥する。膳などの脚もこれと同様の方法で接着する。 |
工 程 名 |
目 的 |
作 業 の 内 容 |
3.引き錆 |
棧付などの接着箇所の補強と整形。 |
接着された棧の周囲(棧の付け根)に錆漆を充填する。乾燥後砥石で軽く水研ぎする。更にとくさで磨く場合もある。 |
4.拭き上げ |
中塗研面を清浄にする。 |
純綿さらし布で水拭きし、更に空拭きする。その後鶏の羽ほうきで埃を払う。 |
5.漆 濾 |
上塗漆中の埃や爽雑物の除去。 |
漆濾は三回位行うのが原則、一回目は二枚の麻布紙を用いる。二回目四枚、三回目六枚と段々濾紙の数を増して行くのが一般的である。銅鍋で湯煎して粘度を下げて濾すこともある。 |
5.上塗り |
最後の仕上塗 |
上塗漆をヘラで均等に配り、埃がある場合は節上げベラで取り、上塗刷毛でならすように延ばし、全面に均一な厚さに塗布する。塗布後、刷毛目が落着いてから烏軸などで節上げをする。立体的形状で漆が流れやすい面の上塗の場合は手返しを行う。(この地方では回転風呂は普及していない)津軽地方では上塗は無地塗師(無地塗屋)として独立分業している。 |